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マリオ真章224

「なんなんすか、あの態度」
ミヤモトは、閉まるドアに冷めた視線を向ける。
「あんなんで、後方支援が務まるんですか?」
「それを言われると、隊長としては辛いな。根っこは悪い人間じゃないはずだけど、戦闘支援は出来ないからね。点 数を稼いで上に行きたい連中には、訓練生でも戦闘に参加しているのが気に食わないんだろう」
「そんなもんなんですかね」
ミヤモトは、苦虫を軽く噛み潰したような表情をこちらに向けた。
「例外もあるだろうから、全部とは言えないけど、どこの部隊も同じじゃないか?」
「ふーん」
ミヤモトは、力のない声で答えた。
「で、その話はもういいんですけど、書類にハンコだけもらえます?」
「書類?」
「これです」
ミヤモトは、「始末書」と殴り書きされた封筒を差し出した。
「始末書? 何の? というか、なんで僕に?」
「グリーンバーグのおっさんが、俺の首が飛ばないように、誰か代表で始末書を書け、っていうもんで。みんな<ブーツ>に載ったのに、誰も書こうとしないんで、自分が書かされることになったんです」
「そうか。それは災難だったね。ハンコ、ハンコ......」
オーバーオールのポケットに手を突っ込むが、ハンコらしきものに出会わない。
「すまない。ハンコは多分、ブリッジだ。一緒に来てもらってもいいかな?」
「いいっすよ。というか、元々そのつもりでしたし」
「そうか、ありがとう。高橋」
  高橋の方へ顔を向ける。
「行こうか?」
「あ、はい」
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マリオ真章223

 困惑気味の高橋を他所に,さっさとエレベーターに乗り込む。
「行かないのかい?」
「あ、えっと......」
  高橋の背中に、周囲の耳目が集中する。耳をそばだてれば,「たかが訓練生」と僕との組み合わせについて,陰口や揶揄が聞こえてくるだろう。
 高橋の右側で輪になっていた連中が,彼をねめつけながら近づいて行く。
「艦長,誘う相手が間違ってるんじゃないですか?」
一番前にいる緑帽子の男が,こちらを振り返る。
「いや,彼であっている。彼はしかるべき報奨を受け取るだけの功績を残している。これから,それを授与するところだ」
「功績? へえぇ」
 男は,高橋に顔を寄せて上からしたまで観察して行く。高橋の表情に,さっと緊張が走る。男は顔をあげ,再び僕を見た。
「ただの訓練生が?」
「ああ。彼は先の戦闘で相応の結果を出した」
「相応の結果? 訓練生が? それはちょっと問題じゃないですか」
「そうか?」
「訓練生に重要な局面を任せて,万が一のことがあれば,艦長はどう責任を取るつもりで?」
「責任も何も,問題は起きなかった。だから,問題はない」
 男は,顔に少し苛立ちを浮かべながらこちらへ近づいてくる。視線は,僕の目,あるいは眉間を貫くように吸えられている。
「あまり独断専行がすぎるようなら,後々,上層部へ掛け合うことになりますよ」
 男の取り巻きが,高橋の逃げ場をふさぐように取り囲む。高橋は,不安げな表情を浮かべている。高橋の右手側の,自動ドアが開く。
 男は,僕の前で足を止めた。
「それはつまり、」
 男は、僕の胸ぐらに腕を伸ばす。それを合図に,高橋を囲んでいた取り巻きの一人が、彼に向けて腕を伸ばした。
「こういうことかな?」
僕は男の腕をつかみ、その体ごと壁に押し付ける。高橋の方に目をやると、ミヤモトが取り巻きの腕をつかみ、他の2人を睨みつけている。高橋は、後ろから来たミヤモトを見て、
「ありがとうございます」
「いや、いや。たまたま通りかかったら、体操をしてたみたいなんで」
ミヤモトが、こちらに顔を向ける。僕はそれに、少し意地悪く笑って返す。
宮本は、腕をつかんだ男を含む取り巻き3人に、視線を向ける。低く抑えた声で
「それで、まだやる?」
男たちは困惑したように、こちらをーー正確には僕が体を押さえつけている男の方へ顔を向ける。僕はその後頭部へ声をかける。
「どうなんだ?」
 男は、帽子を落とすのも構わず、こちらへ顔を向ける。男は渋い表情を浮かべている。僕は腕を話す。男は、床に押した帽子を拾い上げ、はたいてホコリを落とす。乱れた衣服を整え、帽子をかぶり直して、オーバーオールのポケットに両手を突っ込んだ。やや背を落とし気味に、居住区の方へ足を向けた。取り巻きの方を振り返りもせず、力がなさそうに「行くぞ」と声をかけると、取り巻きは舌打ちを残し、ぞろぞろとくっついて行く。

マリオ真章222

「さて、どうしたものか」
  覡に特大プリンをおごることを約束したものの、とうの本人を見つけられない。
  訓練生の居住区に足を向けはしたが、今回だけで100を超える人数がいる。階級に差のない訓練生は、全員が4人から6人が1部屋に押し込まれていることを考慮にいれても、最悪の場合、20は 部屋を回らねばならない。
  惰性で動かしていた足を止め、顔をあげる。艦を前と後ろとに区切るエレベーターホールまで来ていた。
  休憩用のソファに腰掛け、談笑していた数人が立ち上がり、敬礼を取る。おざなりに手を上げて、礼を返す。手近な通信機の前に立ち、受話器をとって艦橋を呼び出した。2、3コールおいてモニターに、巨大なアフロが映る。
<はい>
「なんだ、キノピオか」
<なんだ、ってなんです?>
「ああ、いや。もっと別の連中が出るのかと思って」
<こっちは今ちょっとバタバタしてましてね。みんな手が離せないんです>
  モニターの向こう、アフロの隙間から除く限りでは、確かにどの隊員も走り回っているような感じがする。
<それで、用件はなんです?>
「隊員の部屋を聞こうと思っただけなんだ。急ぎの用でもないし、忙しいならいい。忘れてくれ」
<隊員の部屋番号ですね>
  キノピオは、モニターの方へ体を向けた。
<名前は?>
「忙しいならいいって」
<忙しいから、さっさと済ませてください。中尉には早くもどってもらわないと>
「僕が戻る?」
  キノピオは、顔をこちらに向ける。
<本国からの暗号電文が来てるんですよ。どうも、10分以内に秘密回線を使った通信があるようで、責任者であるあなたには、それまでにもどっておいてもらいたいんです>
  本国からの通信? このタイミングで一体なんだというのだろう。まあ、いい。その時になればわかるだろう。
「キノピオ、指示の変更だ。厨房に連絡して、バケツサイズのプリンを大至急用意させてくれ。それと、訓練生の覡、戒の両名をブリッジまで呼び出してくれ」
<は?>
「いいから早く。頼んだぞ」
  受話器を架台に戻し、通信を切る。
「中尉?」
  声に振り返ると、高橋が立っていた。
「高橋? 休息中かい?」
「はい」
「なら、ちょうどいい。君もブリッジへ行こう」


余談
1年以上ぶりの続き。冨樫氏を悪くは言えません......。

マリオ真章 #221(LR_37)

「よぷに」
 看護士の格好をした彼女の方へ、視線を向けた。よぷには気だるそうに「はぁい」と答えた。
「ここのことは、お前に任せる」
「はぁい」
 本当に聞いているのかいないのか。それはどちらでもいい。
 ゴジータの方を向くと、彼は頷いて返した。よぷによりもあちらに向けて指示を出した方が良いのかもしれない。
「飲酒は、その一本だけだぞ」
「はぁい」
 ゴジータが持ち込んでいたビンを指差した。念を押したつもりのよぷには返事もせず、とろんとした表情でベッドに崩れ落ちた。着衣が乱れるのも構わず、そのまま寝息を立て始める。
「ったく。ゴジータ、任せた」
 ゴジータは突然姿勢を正し、直立不動で敬礼を取った。
「は。私に任せるであります」
「ああ」
 踵を返し、ゴジータに背中を向けた。一歩踏み出した所で、顔だけを後ろに向ける。
「表の札は変えておいてやる」
「ありがとうございます」
「気にするな」
 振り返らないで手を振り、医務室の敷居を跨ぐ。後ろ手で扉を閉め、「診察中」の札を裏返し、「休診」に変える。もっとも、戦闘がなければ、わざわざここまで来る者もいないだろう。
 居住区、艦の後方へ向けて歩を進める。そちらへ行けば、覡か戒の情報が得られるだろう。今回の場合は、<LUIGI>の士官や下士官部屋が艦の中央からやや前よりに、訓練生が過ごす相部屋は艦の中央から後ろになっている。いつもであれば、<MARIO>の隊員が前、<LUIGI>が後ろという配置。
 前の方は、「居住区」とは名ばかり。下部の格納庫と上部の艦橋の間を埋めるためのスペースであるため、各部屋の防音がいかにしっかりしていようと、上下の騒音で落ち着いて寝てもいられないと、兄さんから聞いた事がある。それでも、戦闘の疲れや、並外れた精神力で寝られるのが<MARIO>で生き残れる人間だそうだ。
 普段、後ろの比較的静かな部屋が宛てがわれている<LUIGI>の隊員にしてみれば、今回の航海は心身共に疲れているのかもしれない。幸い、隊長である僕の部屋は、毎回同じ部屋が宛てがわれている。ブリッジに通じるエレベーターホールに近い、後方通路の一番手前。最初の頃は、エレベーターが動く度にその音に悩まされていたが、今ではそれすら心地いい。<MARIO>の部屋へ一番近いというのも良いし、ブリッジへ呼び出されても3分で行ける。それなりにいい部屋だ。

マリオ真章 #220(LR_36)

 ゴジータは酒ビンをよぷにに手渡し、上着のシャツを脱いだ。タンクトップになった彼の身体は、いかに鍛え上げられているかが良く分かる。
 彼は一歩前に歩み出て、間合いを詰めた。
「やろうと言うのか?」
「貴殿がそのつもりなら、いつでも」
 ゴジータは右腕に力を込めた。丸太ほどの上腕二頭筋が、さらに膨れ上がる。
「戦いというのは、筋肉でするもんじゃない」
「ほぅ、分かっておられますな。じゃあ、やりましょうか?」
 彼は右脚を引いて半身になり、膝を軽く曲げて腰を落とした。素早い体重移動、筋肉だけの男ではないようだ。その全身にたぎる力が、ぐっと足元へ押し付けられる。合図さえ出せば、今にも飛びかかって来る勢いだ。
 気圧されぬよう睨んでみたが、このまま黙っていても、にっちもさっちもいかないらしい。緊張を解いて、軽く右手を上げた。
「止めよう」
「おや、逃げるのですかな」
「逃げる? 誰が」
 間合いを計るためにつき出された、ゴジータの左手の前に身体を進める。軽く曲げたその腕、その肘が少しでも動けば脳震盪は免れない。
 だが、ゴジータは一向に動く気配がない。呼吸すら止めて、こちらの出方を伺っている。
「お前のためだ」
「私の?」
「そう、お前を地下の営巣に入れないために、止めようと言っている」
「一体、何を」
 ゴジータはキョトンとした表情で、僕を見つめた。
「僕は、お前の上官」
 力が抜けているゴジータの左拳を避け、さらに懐へ進む。ゴジータの視線が下へ向かう。僕は鳩尾の前で歩みを止めた。
 彼の目には、肩の階級章がしっかりと見えていることだろう。
「<マリンポップ>、当艦の艦長だ」
 驚いたような吐息が、頭上で漏れた。その表情を見れないのは、少し残念だが、あえて無視した。真っ直ぐに伸ばした右拳を、鳩尾に置く。
「喧嘩をしたいのなら、いつでも言え」
 軽く拳を引き、音がするかしないかの極弱い力で、鳩尾を打った。
「すぐに営巣入りだ」
 笑顔を作って、上を向いた。ゴジータは顔を引きつらせて、固まっていた。しばらくすると、徐々に顔を緩めながらぼそりと呟いた。
「は、はい」
 ゴジータの身体が、徐々に構えを解いて行く。僕はそれを最後まで見ないで、踵を返した。
プロフィール

Maskedwriter

Author:Maskedwriter
ども。仮面ライターです。
趣味で文章を書き続けて8年くらい? の学生です。
どうぞよろしく。

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