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マリオ真章 #195(LR_11)

「あ、いや。あんたじゃなくて、こっち」
 胸元にネームプレートに「覡」とある少年は、座り込んだままの女性を指差した。指差された方の「戒」は、すねたようにその手を取って立ち上がる。
「姉に向かって、こっちって何よ。こっちって。それにこの方は、隊長さんじゃない」
「へぇ。あんたが?」
 覡は、顔を緩ませた。僕を頭の先から、脚の先までなめるように眺めていく。好奇のまなざしか、疑いの眼差しかを判断する前に、覡は口を開いた。
「で、隊長さんがこんな所で何やってんの?」
「おっと、そうだった」
 通路の左奥、エレベーターの方へ目を配る。乗組員室や食堂へ通じる階段が、そこから3メートルほど手前の脇道にあるのを考慮すると、全力で走るわけにはいかなかった。
「じゃあ、僕はここで。お姉さんは任せた」
 速度を抑えつつ、足の運びを早めた。背中に感じる視線は、さっきの姉弟の物だろう。帽子もシャツも<色無し>の彼ら訓練生が使うことのない、格納庫直通のエレベーターに、隊長が走っていくのだ。僕だって、彼らの立場なら扉が閉まるまで見つめていたい。
 呼び出しボタンを押すと、僅かの間も置かずに扉が開いた。ゴンドラに乗り込み、操作パネルに向き合った所で、彼らと目があった。3つ下の格納庫へのボタンを押して、「開く」を押したまま手招きした。
「君らも来い。緊急事態だ。人手が欲しい」
 戒と覡は、二人揃って辺りを見回した。長い通路の前にも後ろにも、彼ら以外の姿は無い事に気が付くと、自分達を指差した。頷いて返したが、反応が鈍い。
「5秒で閉める。急げ!」
 「開く」から指を離し、扉を押さえる手も引っ込めた。二人とも、一瞬反応が遅れたが、即座に駆け出した。足を腕を動かして、競うようにゴンドラに乗り込んだ。横一線で二人が飛び込むと同時に、扉は閉まった。
 僅かな振動の後、頭の上から押さえ付けられるような力が加わった。走って乗り込んで来た二人は息を切らせながらも、ずるずると床に座り込む気配はない。基礎体力は、合格のようだ。
「格納庫は、初めてか?」
 振り返って、二人と向き合った。彼らの後ろからゴンドラ内に光が差し込む。強化ガラスになっているその先は、<ブーツ>や<リーフ>が整然と並ぶ、格納庫の全容が見て取れる。
 ゆっくりと動く巨大な来たいと、その足元を忙しなく駆け抜けていく、小さな人影。活気に溢れる戦闘の檜舞台に許可なく入れるのは、パイロットと整備班のみ。
「はい」
 戒の方は、頷いた。しかし、その隣りで覡は姉の顔を覗き込み、白んだ顔で頭を振った。
「出港前の見学会で、ほんの少しだけど入りましたよ」
「ほぉ。じゃあ、実際の運用を見るのは初めて、ということで良いんだな」
 今度は覡が頷いた。
 押さえ付けるような感覚が、徐々に弱まっていく。ゴンドラ内の階層表示も、切り替わった。最後の最後、ゴンドラが少し跳ね上がるようにして動きを止め、扉が開いて行く――。

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