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マリオ真章 #196(LR_12)

 重量感のある振動音と、甲高い機械の駆動音。さらには、機材の合間を縫って飛び交う怒声が混ざり合い、音の奔流が容赦なく鼓膜を破かんと襲って来る。
「行くぞ。あまり離れないようにな」
 すぐ後ろに控える戒と覡とに間違いなく言葉を伝えようとすると、自然と声が大きくなる。耳を抑えながら、二人は揃って頷いた。
 ゴンドラを降りてからしばらくは、キャットウォークを歩くことになる。格納された機体や、修理に使われる機材の合間を縫う細い通路は、格納庫をぐるりと囲む。そこかしこに設けられた階段を上り下りさえすれば、どこへ行くにもこれが一番早いのだろうが、道が細いからか、整備班はあまり使いたがらない。
 薄い手すりを掴み、作業員の走り回るフロアに降りる。忙しなく動き回り、走り回る整備班とは別に、パイロットスーツを着込んだ集団が、一人の整備員を取り囲んでいた。
「何で機体が出せないんですか」
「出せねぇもんは出せねぇんだよ」
「これは命令だぞ」
「命令だぁ? お前らと一緒に<ブーツ>をお釈迦するなんざ、出来ない相談だ」
 パイロットスーツ組みの最前列はミヤモト。ミヤモトと対峙しているのは、タオルを首に巻き、右手にスパナを持ったままの中年整備士。
「貴様、これ以上侮辱するなら――」
「――やる気か、小僧。まだまだヒヨッコにゃ、」
「――グンペイ・ミヤモト曹長、ロバート・グリーンバーグ少尉。二人とも、そこまでだ」
 ミヤモトと、中年整備士――グリーンバーグに集まっていた視線が、一気に僕へ向けられる。ミヤモトは、やっと来たかとでも言いたげに不満そうな表情で、グリーンバーグは何の用だといわんばかりに、こちらを見やった。
「訓練生に艦内の案内ですか。戦闘配備だというのに、お忙しいんですなぁ、中尉は」
「彼らは、助手だ。作戦のな」
「へぇ、こんな子坊主どもが、ね」
「何だと、おっさん」
「覡、落ち着け。グリーンバーグも言い過ぎだ」
「へぇ。すんませんでしたな」
 グリーンバーグはさして悪びれる様子も無く、袖をまくり上げた覡を一瞥して、視線を逸らした。それが頭に来たらしく、覡は殴り掛かろうとしたが、戒に止められた。口の悪い整備士を挟んで、向こう側に立っているミヤモトも、苛立ちを隠せないようだ。
「グリーンバーグ、<ブーツ>を出せ」
「中尉の分だけなら、いつでも出しますよ。おい、中尉の機体を準備しろ」
「はいっ」
 グリーンバーグの怒鳴り声に、怒鳴り声で返事が返って来る。機体のチェックパネルを見ていた青年が手元を片付けて、奥のメンテナンスベッドまで駆けていく。
「彼らの分も頼む」
 ミヤモト達に視線を送る。グリーンバーグは彼らに視線を投げながら、頭を振って肩を竦めた。
「それは出来ませんな。中尉の命令とはいえ、上層部の許可が必要だ」
「それは僕がなんとかする」
「なんとかする? 中尉、あんたの兄貴は左遷されて、もう<MARIO>の隊長じゃない。あんたがどうこう言った所で、パイプなんて無いも同然だろう」
 グリーンバーグは、痛い所を付いて来た。彼は<MARIO>のお抱え整備班のトップ。身分的には<LUIGI>の隊長である僕よりも、遥かに上だ。
「確かに、君の言う通りだ。だが、今は緊急事態。命令には従ってもらう」
 グリーンバーグは、鼻で笑った。失笑気味に、口元を歪めて僕を見据える。

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