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マリオ真章 #197(LR_13)

「あんた、下手すりゃクビだよ」
「僕の心配をしてる場合か?」
「あん?」
「僕のクビは、君が本艦の営巣に入った後だ。今から、ぶち込んでやろうか?」
 グリーンバーグは、眼差しをキツくして真っ直ぐ睨みつけて来る。ここで負ける訳にはいかない。こちらも視線を逸らさずに睨み返す。
 機械の駆動音と、整備士の靴音がやけに耳につく。辺りを包む静寂は、緊張となって張り詰めた。温度が僅かに下がった視界の隅で、ぼんやりと動く影が近づいて来る。高らかな靴音は、徐々に速度を落としてグリーンバーグの隣りに立った。
「中尉の機体準備、完了しました。あの、搭乗をお願いしたぃ……」
 ハキハキとしていた報告は、デクレッシェンドで掻き消えていく。グリーンバーグは視線を逸らし、不安そうな表情の部下を見やった。
 部下の顔をじっと見て、何かが吹っ切れたらしい。不意に彼は小さく吹き出すと、それを引き金に大声で笑い出した。急に笑ったからか、途中で何度か咳き込みながらも、ひとしきり笑い終えるまで声を出し続けた。
「分かったよ、中尉。俺の負けだ」
 グリーンバーグは、呼吸を整えるべく、一旦言葉を切った。短く息を何度か履いて、深呼吸を2、3度するともとに戻ったらしい。
「それで、<ブーツ>は何機いるんだ?」
「あるだけ、かな?」
 肩を竦めて返すと、グリーンバーグは再び吹き出しそうになったようだ。口の中で笑いを押し殺し、部下に向き直って言葉を繋いだ。
「――だとさ。全員使って構わん。急げ!」
「は、はい」
 部下は踵を返し、一目散に仲間のもとへ駆け出していった。
「これで、いいんだろ」
「ああ」
 グリーンバーグはスパナを腰元に挟み、僕の隣りを通り過ぎた。パイロットスーツを着込んだミヤモトの前で、立ち止まる。
「良いか、貸すだけだぞ。幾ら傷つけても構わん。それを治すのが俺の仕事だ。だがな――」
 彼はそこで振り返り、僕をあごで示した。
「全機戻してもらわんと、あんたらの上司が怖い連中に連れてかれるぞ。それだけは覚悟しておけ。良いな?」
「お安い御用さ」
 ミヤモトはすぐさま笑顔で切り返し、グリーンバーグの差し出した手を強く握り締めた。
「分かったらさっさと走れ。マニュアルは機体の中だ!」
 グリーンバーグは、メンテナンスベッドの方を指差した。背中を叩かれたミヤモトを戦闘に、再び集団で駆け出していく。
「で、その連中も乗せんのかい?」
 彼は僕の後ろの二人に目をやった。覡がさっと身構えるが、戒はそれを止めさせようと、手をかける。覡に「落ち着け」と声を書けてから、頭を振って応えた。
「彼らには、別の仕事がある。じゃあ、行こうか」

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