<中尉!>
通信機に割り込んだのは、ヘッドセットを付けた男の顔。モニターの下部に、<グリーン2>の文字が光った。
メインモニターに目を移す。<グリーン2>の外見は相変わらずだが、援護射撃が減ったためだろう。明らかに機動が鈍っている。敵機も減らしはしたが、<グリーン2>をたたき落とすには十二分すぎる戦力だ。
<まだですか? 流石に、もう――>
「――もう少しだ。踏ん張れ」
<しかし、>
メインモニターの隅。格納庫のハッチを確かめる。ミヤモトの動きか、グリーンバーグの激励か。収艦速度は上がっている。
ハッチを詰めていた<ブーツ>の数は減っているが、<グリーン2>が突っ込むにはまだ早い。
銃口を<グリーン2>の鼻先に合わせ、怒鳴りながらトリガーを引いた。
「<グリーン2>の帰投を援護せよ。<グリーン2>には当てるなよ」
集結した<ブーツ>の腕が、一斉に空へ伸びる。アサルトライフル、マシンガンにグレネードランチャー。個性豊かな銃口から、弾丸が飛び出す前に<グリーン2>の後部で爆発が起きた。
「<グリーン2>」
<大丈夫です。まだ、行けます>
<グリーン2>は底部から黒煙を噴き出しながら、敵機の追撃を回避した。攻撃を仕掛けた敵機には、ナパーム弾が炸裂。一瞬の沈黙の後、膨大な光に包み込まれて爆発した。
その爆風にあおられて、<グリーン2>の機体はぐらついた。姿勢制御が間に合っていない。おまけに、高度が徐々に下がりつつある。
視線を振って、ハッチの方を見やる。まだ、2、3機残っている。
<中尉っ>
ヘッドセットの男は、半ば焦り気味にこちらを見つめた。
「分かっている。もう少し待て」
<もう待てません。エンジン、パージします>
「待て!」
<グリーン2>は一瞬停止した後、両脇の大きな円筒を切り離した。本体から離れ切る前に、四散する。
その爆風を受けた不格好な立方体は、ぐらつきながら降下を始めた。
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