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マリオ真章 #210(LR_26)

 受話器を戻し、到着していたゴンドラに乗り込む。
 グリーンバーグにこってり絞られたらしい、<グリーン2>の搭乗者が医務室へ抜ける階段に向かう所が、ゴンドラの中からも見て取れた。グリーンバーグはその彼に目をくれることなく、<ブーツ>に乗り込んでいた飛行班の連中も使って<ブーツ>をメンテナンスベッドに収め、整備するための指揮を執っていた。
「あいつも大変だな」
 ゴウンゴウンと低い駆動音を響かせるゴンドラの中で、呟いた。
 加速が緩み、駆動音はゆっくりとフェードアウト。到着を合図するベルが鳴り、扉が開いた。そこには、キノピオに送り込まれたらしい若者が、しゃちほこばって敬礼を取っていた。
「大変なのは、あいつだけじゃないってことか」
「は?」
 グッと肩に力を入れ、全身を強張らせていた彼は、そのまま力が抜けたかのようにふにゃりと姿勢を崩した。
「いや。なんでもない」
「は、はい」
 若者は姿勢を正し、再びピッと右手を額に当てた。
「そんなに緊張してると、危ないぞ」
「はい。いいえ」
 ゴンドラを降り、艦橋へ向かって足を踏み出した。向かえと言うか、付き人に近い若者も当然付いて来る。キビキビした足取りで、歩くこと以上に脚の運びや型を意識したかのような動作。
 さらに突っ込もうとした所で、艦が揺れ動いた。直撃でもしたのか?
 状況把握に通信機を探したが、艦橋はすぐそこだ。走った方が速いだろう。そう思って後ろを振り返ると、彼はその場で尻餅をついていた。
「ほら。言わんこっちゃない」
「はい。いいえ」
 彼はお尻を撫でながら、手を突いて立ち上がった。
「大丈夫です」
「大丈夫? 何もない所で転んでる奴がか」
 若者――胸のプレートに目を落とすと『タカハシ』の文字。戒や覡と同じく、訓練生のようだ。だからと言って、彼に訓示の一言も与えずに放っておけば、いずれは死ぬ。
「緊張は仕方がない。ただ、肩と膝だけは力を抜け。咄嗟に動けなくなる。いいな?」
「……」
 高橋は俯いた。
「君の姿勢は正しい。ただ、ここは戦場だ。臨機応変に事に当たれ。でなければ、君が死ぬぞ」
「……」
「返事は?」
「りょ、了解」
 高橋は恐る恐る顔を上げ、緩く敬礼を取った。
「そうか。分かればそれでいい」
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