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マリオ真章 #211(LR_27)

「行こう」
「はい」
 さっきの一言が効いたのか否か。高橋は心無しか、先程よりはゆったりとした足取りで歩を進めた。
 「迎え役」という大義名分を果たすために、僕の前に出た高橋は一度も振り返ることなく、黙々と任務をこなす。手持ち無沙汰、というと戦闘中であることを考えると不謹慎極まりないが、機械の駆動音しか聞こえて来ない、ブリッジへ向かう廊下で、年下の「部下」ともいえない新兵を伴って練り歩いていると、妙な緊張感が辺りに漂って来る。
 どうにかして会話の糸口を掴もうと、後ろから高橋の背中に、遠慮のない視線を突き刺してみた所で、会話になりそうな話題は拾えそうもない。
「高橋の出身は?」
「日本です」
「そうか」
 日本の何処だ、と訊いた所でその返答を訊いても僕には分かるはずもなく。
「この艦には慣れたか?」
「はい。いいえ。こんな経験、初めてなので」
「それは、そう……か」
 <MARIO>の入隊希望者とはいえ、従軍関係者とは限らない。何よりも、まだ幼さの残る高橋が、どこかの戦地を経験していると答える方が驚きだろう。
 結局、会話が弾まないままブリッジに通じる扉の前まで来てしまった。高橋は通信機のスイッチを入れ、中の係を呼び出した。
「ルイージ中尉をお連れしました」
<そうか。ご苦労だった>
「はっ」
 高橋は敬礼を取って、一歩下がった。まだ、<MARIO>の入隊希望者でしかない彼は、非正規クルー。機密の詰まった艦橋に入ることは出来ない。
「ここまでありがとう」
「はい。いいえ。それでは、失礼します」
 高橋はその場で踵を返し、腰に手を当ててゆっくり駆け出した。
「――ちょっと待って」
「はい?」
 高橋は、立ち止まってこちらを振り返った。
「もう一つ、任務を頼んでも構わないかな?」
「はい」
 高橋の表情は少しばかり引き締まったように見えた。優しそうな雰囲気の中に、一筋の緊張が走っているいい表情だ。
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趣味で文章を書き続けて8年くらい? の学生です。
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