FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マリオ真章 #213(LR_29)

 通信先を格納庫に合わせ、呼び出しをかけた。グリーンバーグが出るかと思ったが、勝ち気な眉毛が受話器を取った。
<どうかしましたか?>
「いや、大したことはない。グリーンバーグは出せるか?」
<おやっさんですか?>
 ミヤモトは受話器を離して、後ろを振り返った。2、3度体を左右にひねって「おやっさん」――グリーンバーグを探すものの、見つからなかったらしい。そばを通ったツナギの男に耳打ちしても、頭を振るだけ。
 ツナギの男は、スパナを持ち替えてミヤモトから受話器を取った。
<おやっさんは、今手が離せなくてね。伝言なら、自分が承りますが>
 メガネの鼻当てを押し上げ、胸の「ライディース」と書かれたネームプレートに触れる。ネームプレートの階級章は曹長。少しは話が出来るだろう。
「ライディース曹長。今、新人が2名。そっちに行った。加勢のつもりだ、適当に使ってやってくれ」
<適当にっていうのは、『言葉の通り』でしょうか?>
「ああ。そうだ」
 ライディースは、視線を上げてゴンドラのある方へ目を向けた。高橋が到着したようだ。もう一方の覡にも、階段を下りて来る足音で気が付いたようだ。
<あのお嬢さんとあそこの坊やですね>
「ああ」
<分かりました。お世話致します>
「よろしく頼む」
<はっ>
 ライディースは敬礼を取って、受話器を戻した。ミヤモトが悔しそうな表情で、それに付き従ってモニターの前を離れた所で、通信が途切れた。
 その余韻に浸る間もなく、目の前の扉が開いた。
 そこから出て来たのは、巨大なアフロ。思わず後ずさる。
「中尉、何やってんですか?」
「あ、ああ。すまない、キノピオ」
 キノピオは不機嫌そうに僕の袖を掴み、無理矢理引き込もうとする。
「早く入って、指示出して下さい。まだ第一種戦闘配備、戦闘中ですよ」
「ああ。分かってる。分かってるからそんなに引っ張るな」
 キノピオの腕を振り払い、ブリッジで一番高い席に腰掛けた。ドリンクスタンドに置きっ放しだった水筒を取り上げ、水でのどを潤してから無線機を取った。
「キノピオ、艦内放送に」
「了解」
 キノピオは自席――通信士席に座り、計器類を操作した。
 艦長席の前にあるモニターに、「ドメスティック」とオレンジの文字が表示された。これで、艦内全域に僕の声が行き渡る。
「あ~、本艦はこれより最大船速で現海域を離脱。目的のヨースター島沿岸まで、敵のど真ん中を突っ切る」
 誰が聞いていて、誰が聞いていないのか分からない。ただ、環境のクルーは、砲撃班やレーダー班を除いたほぼ全員が、顔をこちらに向けて真剣な表情で耳を傾けていた。
「第二種戦闘配備。総員、艦の防衛に当たりつつ自身の安全を確保せよ」
「第二種戦闘配備、了解」
 艦内放送とは別に、アラートが響き渡る。
「<マリンポップ>最大船速。皆、何かに捕まれ」
 無線機を戻し、アームレストを握り締めた。
 <マリンポップ>のエンジンが、うなりを上げながら速力を上げて行く。急激な加速が、鈍重に身体をシートに押し付ける。その重さを全身に感じながら、歯を食いしばりひたすら祈った。無事に、陸へ上がれるように――。
スポンサーサイト

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

Maskedwriter

Author:Maskedwriter
ども。仮面ライターです。
趣味で文章を書き続けて8年くらい? の学生です。
どうぞよろしく。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。