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マリオ真章 #217(LR_33)

「次は……」
 整備員と機械の動きを見ながら、格納庫の端へと向かう。そこから2階通路を兼ねたキャットウォークに上がれば、食堂や医務室の方向へ抜けられる。甲板にも上がれるが、今は止めておこう。
 キャットウォークに上がる、一番手近な階段を見つけた。そこへ向かって歩を進めていると、すぐ脇に通信機が設置してあるのが見えた。
 別段、誰かに連絡を取る必要もなかったが、あの姉弟の顔がぼんやりと浮かんだ。そう言えば、あの弟には特大サイズのプリンをおごる約束もしていた。
 通信機の前に立ち、送信機を取った。医務室の内線番号を入力し、じっと待つ。
 2回、3回、4回。呼び出しのベルは聞こえるが、誰も出る気配がない。視線を上げて、通信機のモニターに目をやる。液晶のモニターには、きちんと「医務室」と表示が出ていた。間違っているのではなさそうだ。
 画面の隅にやっていた視線へ、不意に潤んだ瞳が飛び込んで来た。
<はい?>
 初めて見る、女の乗務員。看護士の制服を着てはいるが、帽子が微妙にずれていたり、覇気がなかったり、正規の看護士というよりは、間に合わせの人員のように見える。
「えっと、そこに戒か覡はいてるかな?」
<戒? 覡?>
 モニターの女は、ピンと来ていない様子で首を傾げた。
「そう」
<あなたはどちら様?>
「僕? 僕はルイージ。中尉で分かると思う」
<『中尉』さんですね。少々お待ち下さい>
 女は送信機に手を当て、そばを通った医師に「戒か覡はいてるか」と訊ねた。医師は、不可解な様子で彼女を見つめる。「誰が探しているのか」と医師が訊ねると、彼女は素直に「中尉」と答えた。
 「中尉?」と医師は途端に慌てて、顔を上げた。その視線が、モニター越しに僕へ向けられた。女から受話器を取り上げ、急にしゃちほこばって襟を正した。
<戒も覡も、ここに居たのは昨日だけです。今日は、二人とも居てません>
「そうか。ありがとう」
<それで、他に何か?>
「いや、いい。今から直接そっちに行こう」
<えっ? あ、はい。お待ちしてます>
 通信の終わり際、医師は急に慌てた様子で辺りを見回していた。最初に受話器を取った女は、終始ぼんやりとした表情のまま、モニターの向こうへ消えた。
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